Liber specialis lectionis

西洋中世の歴史、宗教、文化を中心とした読書日記

2020-01-01から1年間の記事一覧

『西洋中世研究』に寄稿しました

『西洋中世研究』第12号に投稿論文が掲載されました。 「呪詛ではなく祝福をーマンスフェルト伯家と家門修道院ヘルフタに見る13世紀末の紛争と和解ー」2020年、128-143頁 ヘルフタ修道院は神秘主義で有名なシトー会女子修道院です。この修道院で作成された証…

『「聖女」の誕生ーテューリンゲンの聖エリーザベトの列聖と崇敬ー』の読み方

友人から「買ったけれど難しい」という感想をもらったので、聖エリーザベト紹介を中断して、この本の読み方を提案します。 この本は、私が中央大学に2012年に提出した博士論文「聖人伝と聖人崇敬から見る13世紀ーテューリンゲンの聖エリーザベトをめぐってー…

テューリンゲンの聖エリーザベト紹介(4):ヴァルトブルク城前編

テューリンゲンの聖エリーザベトについて。今日はヴァルトブルク城です。 1999年に世界遺産に登録されたヴァルトブルクはテューリンゲン州アイゼナハにある山城で、当時、テューリンゲン方伯だったルドヴィング家の居城として11世紀頃に建てられました。現在…

テューリンゲンの聖エリーザベト紹介(3):マールブルク

テューリンゲンの聖エリーザベト紹介、続きます。今回はヘッセン州マールブルクです。「聖エリーザベト」というと、この都市が最も有名です。1228年頃から聖エリーザベトが施療院を設立して暮らしていました。聖人の善行として有名な病人の看護や貧者の世話…

テューリンゲンの聖エリーザベト紹介(2):テューリンゲン?ハンガリー?

「テューリンゲンの聖エリーザベト」紹介第2弾です。 ヨーロッパ中世は基本的に名字というものがありません。名字があるのは王家や貴族のごく少数派です。その人たちも、もとをたどれば同じ名前を代々使っているところから派生した名字だったりします(たと…

テューリンゲンの聖エリーザベト紹介(1):エリーザベト?エリザベート?

拙著『「聖女」の誕生ーテューリンゲンの聖エリーザベトの列聖と崇敬ー』の出版が近づいているので、その前に「テューリンゲンの聖エリーザベト」にまつわるあれこれを簡単に紹介したいと思います。初回は名前についてです。 「エリーザベト」のアルファベッ…

【お知らせ】単著が出ます

お知らせです。 2012年に提出した博士論文をもとにした、中世盛期の聖人崇敬と聖人伝についての本が出版されます。10月10日から書店売り開始ですが、予約も始まっています。 「聖女」の誕生──テューリンゲンの聖エリーザベトの列聖と崇敬 作者:三浦麻美 発売…

【文献紹介】ミリ・ルービン『中世』

Miri Rubin, The Middle Ages: A Very Short Introduction, Oxford, 2014. The Middle Ages: A Very Short Introduction (Very Short Introductions) (English Edition) 作者:Rubin, Miri 発売日: 2014/10/23 メディア: Kindle版 オクスフォード出版のA Very…

日本の手芸はいつ牙を抜かれたのか(2)

最近は日本の手芸とジェンダーについての本が色々と出ているが、社会制度の面から見ると、どのようにして手芸が政治に取り込まれていったのかがわかるものは意外と少ない。なので、(1)に続いて編物を題材に戦後の様子を概観する。 (なお、これはきちんと…

授業で使えるドイツ語映画(2)

2019年度に担当講義で上映した映画とその候補作のメモ。 この年度から1コマ当たりの講義時間が100分に延長になったため、90分くらいでカットなしに鑑賞でき、かつ感想を書く時間が確保できそうなものを選んだ。しかしそうやって選んでも、現実は教室のプロジ…

研究会「西洋中世における共同体ーインエクレシアメント論の視点からー」開催のお知らせ

研究会のお知らせです。 2月15日(土)に東洋大学で研究会「西洋中世における共同体ーインエクレシアメント論の視点からー」を開催します。私も趣旨説明で少しだけ話します。 インエクレシアメント論は日本語ではなかなか言及される機会がないので、これをき…

映画:「ジョジョラビット」

「ジョジョラビット」を見てきた。2019年アメリカ製作、監督タイカ・ワイティティ、主演ローマン・グリフィン・デイヴィス。今年のアカデミー賞では作品賞をはじめとする複数の賞にノミネートされている。 タイカ・ワイティティ監督がヒトラーに!映画『ジョ…

授業で使えるドイツ語映画(1)

私はドイツ語講読の授業を担当しており、その中では半期に1回ドイツ語映画を鑑賞する機会を設けている。この教材選びは結構悩ましいので、今まで使った映画と候補にしたものをまとめておく。選ぶ際の条件は以下の通り。 ・ドイツ語が話されており、日本語字…