私はドイツ語講読の授業を担当しており、その中では半期に1回ドイツ語映画を鑑賞する機会を設けている。この教材選びは結構悩ましいので、今まで使った映画と候補にしたものをまとめておく。選ぶ際の条件は以下の通り。
・ドイツ語が話されており、日本語字幕がある(授業では字幕版を見せる)
・授業1回(2018年度までは90分、2019年度からは100分)でだいたい筋が把握できて、リアクションペーパーを書く時間が確保できる長さである
・歴史と関わりがある内容である(講読テキストと関連あるとさらに良い)
ここからは、2018年度までの使用教材を挙げる。つけたコメントはあくまで「教材としての観点」からであり、作品自体の評価とは関係ない。
・「私はヒトラーの秘書だった」(2002年、90分)
第二次世界大戦末期、ヒトラーの秘書だったトラウデル・ユンゲのインタビューをまとめたドキュメンタリー。なかなか手に入りにくいが、「ヒトラー 最期の12日間」のエクステンデット版に付録として付けられている。
ドイツ語がクリアで聞き取りやすく、長さもちょうど良い。
・「ベルンの奇蹟」(2003年、117分)
1954年サッカーW杯スイス大会における西ドイツ代表優勝までの軌跡と、第二次世界大戦からのドイツ社会の回復を絡めて描いたもの。
長いので途中を省略せざるを得ないが、W杯の年には使う。ただし、サッカーにあまり興味がない学生が多いと、W杯自体の仕組みを理解していないような感想が来ることもある。
・「善き隣人のためのソナタ」(2006年、137分)
文句なしの傑作(第79回アカデミー賞外国語映画賞も取っている)。ドイツ語ができると最後のシーンでの感動が深くなるため、これを見せるために逆算すると40分近く省略せざるを得ないのが苦しいところ。
あと、他の授業でも使う可能性が高いので、他の教員に見せたかどうかを聞いて回ることになったり、用意が大変。
・「ハンナ・アーレント」(2012年、113分)
アイヒマン裁判がテーマであり、すでにアーレントはアメリカにいて英語がメインなのだが、途中でドイツ語の会話もあるので、かろうじて条件はクリアする。
事前にハイデガーの哲学とナチズムの関係やアーレントが指摘した「悪の凡庸さ」の革新性を説明する必要あり。そうしないと、学生の印象に残るのはアーレントよりもメアリー・マッカーシーだったりする。