Liber specialis lectionis

西洋中世の歴史、宗教、文化を中心とした読書日記

大島旅行記

 2019年8月、勝山の後に大島(香川県)にも行ったのでその記録。

 この島は現在開催中の瀬戸内国際芸術祭に参加している。島全体が国立療養所大島青松園であり、かつてハンセン病に罹ったためにこの園に入り、完治後の現在も暮らす入所者のケア施設となっている。

 1909年に開園し、最大時は700人を超える人々が住んでいた。1929年頃からハンセン病に隔離政策が始まり、1947年には治療薬が完成していたにもかかわらず、1958年頃には無らい運動により在園者数が急増した。1996年にらい予防法が廃止されるまで、この政策は継続した。

 

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納骨堂

 2003年に作られた納骨堂。1,443名の遺骨が納められている。

 

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宗教地区

 島の北側にある宗教地区。写真にある通り、神社と教会が隣接している。居住者が何らかのコミュニティに所属するよう信仰が奨励されたとのことで、仏教寺院などもあったらしい。後ろの教会はプロテスタントのもので、設計者はヴォーリスとのこと。

 

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風の舞

 さらに島の北側に行くと、1992年に作られたモニュメント「風の舞」がある。タイトルは「死者の魂が風に乗って島を離れ、自由に解き放たれるように」という願いから来ており、全体で世界を象徴している。

 

 芸術祭なので、屋外や長屋に展示作品がいくつもある。写真は撮らなかったが、もっとも強烈な印象を受けたのは、田島征三作「Nさんの人生・大島七十年ー木製便器の部屋ー」だった。入所者の住居だった長屋の一棟を絵本の一ページに見立てることで、Nさんの生涯のいくつかの場面が立体的に描かれている。この作品を見るためだけでも、大島には行く価値があると思う。