Liber specialis lectionis

西洋中世の歴史、宗教、文化を中心とした読書日記

街頭演説に行ってみた

 7月7日中野駅北口で行われた自民党の街頭演説会に行ってみた。丸川珠代候補の応援演説会である。あれほどたくさんの議員を見たのは初めて、というか自分の選挙区選出の議員も実際に見たのは初めてだった。

 

 けっこう人がたくさん集まっていたので、密集しているところは避けて端の方で聞いた。真打が登場するまでは自民党の中野区議、東京都議、改選に当たらない参議院議員選挙対策本部の衆議院議員などが順番に出てきて応援演説をするらしい。基本的に反応は薄く、「お集まりのみなさん、こんにちは〜」という元気のよい呼びかけだけが響き渡る。この挨拶といい、話の内容といい、小学校の朝礼を思い出さずにはいられなかった。

 

 候補者本人と総裁が登場すると俄然野次が活気づいたが、話の内容自体は普段言っていることと大して変わらず、果たして選挙の応援をする気があるのかよくわからなかった。つまり、党の実績がメインで、「なぜこの候補に入れるべきか」という根拠が全くわからなかった。

 

 この点で興味深かったのは、むしろ前座として登場した演説者たちである。「丸川さんはやさしい政治家」「子育ても介護もがんばっている」「環境大臣、オリンピック・パラリンピック担当大臣として実績を残した」といった褒め言葉を全員が発していた。よく聞くフレーズな気もするが、「やさしい政治」はどんな風に、誰に対してやさしいのか全く説明がなく、実は実態不明の表現だ(そして、国民全員に同時にやさしくすることは不可能である)。子育ても介護も、伝統的に女性が担い手とされてきた分野に属す。そして、大臣の経歴はあるにせよ、具体的な実績に言及した演説者は一人しかいなかった。

 

 これらの応援演説から浮かび上がってくるのは、「女性は生来やさしく、子育てと介護を担うのが大切で、それ以外の仕事はおまけ」という強固な性別役割分業の意識である。全員がこの同じ枠組みを採用しており、賞賛する意図で発した言葉の中に無意識に表れていたことは、この党が現状の性差別を肯定し、対策の必要を認めていないことを示している。

 

 女性議員を増やすことは大切だが、女性候補なら誰に入れてもいい訳ではない。ごく当たり前の教訓を得た。